aimee-mehren’s blog

生命倫理を専攻する大学院生のブログ

同性カップルが子どもをもつとき(男性編)ー養子縁組と代理出産

2018年2月19日

こんにちは、まなです。

 

イギリスの男性同士のカップルが、子供をもつことを公表し、ニュースになりました。

www.huffingtonpost.jp


今回は、男性カップルが「両親」となり子供を育てることや、「代理出産」の問題点について、考えてみます。

 

 ざっくりいうと…

  • 家族像が多様化している事例の1つ
  • 男性同士のカップルが子供を育てることに反対する人もいる
  • 代理出産にもいろんな倫理的問題がある
  • カップル間、代理母との関係づくりが重要だが、家族のあり方について可能性は広がっている

 

 

記事の内容

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水泳の飛込競技でオリンピック2大会連続銅メダルを獲得している、イギリスのトーマス・デーリー選手は、自らゲイであることを公表し、2017年にパートナーの男性とイギリスで結婚しています。

2018年2月14日に、「バレンタインデーおめでとう」のメッセージとともに、パートナーと赤ちゃんの超音波写真を公開しました。

写真以外の詳細は明らかになっていませんが、デーリー選手の広報担当者もふたりの最初の子供が生まれることを明かしています。

 

記事にもありますが、

男性同士のカップルが子どもをもつには代理出産か養子縁組が主な手段となります。

 

男性カップルが親になる①養子縁組

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同性のカップルが養子を受け入れて子供を育てることは、イギリスをはじめ、スウェーデン、オランダ、フランスでも認められています。

日本でも、2017年、大阪市が男性カップルを里親として初めて認めました。

www.tokyo-np.co.jp

一方で、母親がいない家庭で子供を育てるのはその子供にとって良くないと考える人もいます。

例えばフランスでは、2013年「同性婚」法案を可決し、養子縁組に関する権利なども与えられましたが、法案をめぐってはフランス中で大議論が起きていました。
法案に反対する人たちの中には、ホモセクシュアルを嫌悪し中絶にも反対してきた超保守派や、教会法「結婚は男女の愛の結び付き」を掲げ、同性結婚と彼らの養子縁組を「文明の終焉」「人類の均衡破壊」と主張するカトリック教職者もいましたが、

同性結婚は認めつつ「子供はパパとママが必要 ! 」「父・母という言葉を排除することは父・母という概念を取り壊すことになりかねない」と彼らの養子縁組に反対する人たちも多くいました。

確かに、男性カップルが養子をとることは、親の離婚や死別など、やむをえず父子家庭になる場合とは異なり、最初から母親のいないと分かった上で子供を育てていくことになるため、問題視する意見もあります。
しかし、家族のあり方が多様化している現代において、父子家庭では、あるいは母親がいなければ子供が幸せに育たない、ということはないと思います。
2人の父親が良好な関係を築いていればなおさら、子供が幸せに育つ環境は整えられるでしょう。


男性カップルが親になる②代理出産

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何らかの理由で子供を授かることができない夫婦が、代わりに第三者の女性に妊娠・出産してもらう代理出産ですが、
男性同士のカップルが代理出産で子供をもつ場合、養子縁組との一番の違いは、男性どちらか一方の遺伝子を受け継ぐことができる、ということです。

カップルのうちどちらか一方だけだとしても、自分たちの遺伝子上の子供が欲しいと考える人は多いでしょう。

 

さて、「代理出産」には、以下の2つの種類があります。
①夫の精子を女性の子宮に導入し、出産してもらう方法サロゲートマザー
体外受精技術を用いて、夫婦両人との遺伝的なつながりをもった子を、夫婦外の女性に出産してもらう方法=ホストマザー

男性同士のカップルの場合、主に①の方法をとることになります。卵子は健全だけれども、(子宮の病気などで)自分で産むことができない女性が代理出産を望むケースと同じです。(男性も、精子はあるけど自分では産めない状態、ですもんね。)

そのため、男性同士の代理出産サロゲートマザー方式の代理出産と同じ、以下のようなリスクがあることになります。

 

代理出産における倫理的問題

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①生命のリスク

出産者は時には生命の危険を負いながら、長い妊娠期間を過ごさなければならず、当然出産時にも、命に関わるリスクを負うことになります。

 

代理母心理的苦痛
胎児との間には確かな身体的絆が存在するとともに、遺伝的にも「実の親子」であるため、出産後に血縁関係をもてない時に心理的な苦悩を抱えることがあります。(「ホストマザー」方式であっても、生まれてくる子に深い愛情を感じて、実際に親権を主張し訴訟を起こす事例も発生しています)

 

③生殖機能の搾取につながる
女性の身体を「生殖のための手段」と認識せざるを得ない「代理母」という仕組みに対して違和感を覚える人もいます。

 

④産まれた子供の心理的苦痛
生まれてくる子供が、自らの出生について苦悩する可能性があります。(子供にとって、自らの出生の由来について知ることは、自身のアイデンティティの存立にとって極めて重大です。)

 

代理出産はアメリカ(一部の州)、 ギリシャ、ロシア、ジョージア(グルジア)そしてウクライナなどで合法化されており、イギリス、デンマーク、ベルギーなどでは、代理母に対して金銭の授受がない場合、もしくは妥当な出費のみを支払う場合において認められています。

日本では代理出産は認められていませんが、上記にあげた国で代理出産を行う事例は少なくありません。


代理出産を希望する場合には、上に挙げたような問題点も分かった上で、代理母がそれでもこのカップルのために子供を産む手助けがしたい、と思えるような関係づくりをすることが欠かせません。
また、将来子供が母親の存在を知りたくなったときにどう対応するのかも、よく話し合っておく必要があります。

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私たちにできること

  • 同性カップルでも子供をもちたいという需要が増えていることを知る
  • 養子縁組、代理出産にどのような問題があるのか知る(将来誰でも関わる可能性があります)
  • 問題も多いけれども、多様な家族像の1つを築く可能性が広がってきていることを知る


今回は、代理出産を中心に、男性カップルが子供をもつ時に生じうる生命倫理の問題を考えました。男女関係、家族のあり方、子供のもち方が多様化する社会では、新しい技術も新しいシステムもどんどん認められていく流れができやすいです。だからこそ、どんな問題があるのか、確認しておくようにしたいですね。

 

また次回も

生命倫理に関する記事を上げていきます。

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